footmedia主催「伝え方講座」 講座に込められた想いを河村副校長にインタビュー

伝え方の大切さを多くの人に届けるためにスタートしたfootmedia主催の「伝え方講座」。2020年の開校以降、就活生やビジネスマン、実況者など、伝え方のスキルやテクニックを必要とする受講者に寄り添った指導を行ってきました。

2022年9月からは、新たに講座のカリキュラムをブラッシュアップ。伝え方に対する多様なニーズに合わせた講座がスタートします。今回は伝え方講座の副校長を務める、現役アナウンサーの河村太朗氏に講座の内容や伝え方を磨くことで起きる変化についてお話しを聞きました。

「伝え方」を身につけて、新しい一歩を前に

——まず「伝え方講座」を開講するに至った経緯について教えてください。

NHKに在籍していたときに、NHKスピーチコンテストの審査員を務めたことがありました。コンテスト後に、参加した高校生に向けて「こういう風にしゃべったらいいよ」とアナウンスのアドバイスをする機会があったんです。普段の指導は学校の先生がされているとのことだったので、現役のアナウンサーという立場でアドバイスをしたところ、みなさんどんどん吸収していって、メキメキと上達していく様子を見ることができて楽しいなと思いました。

その後NHKを退職して、アナウンサーというプレイヤーの立場以外に自分の仕事の幅が広がったときに、アナウンサーの経験を活かした活動をしたいと思いました。プレゼンやスピーチをする人を見て、「こういうスキルが身に付いたら、もっと上手くいくだろうな」と思う機会があったことと、高校生に指導したときの教える楽しさがリンクして、講座を開いてみよう!と思い立ち、西岡さんに相談しました。

—— 伝え方が身につくと、どのように変化が起きるのでしょうか?

今までよりも、一歩前に出ることができると思います。前に出るというのは、物理的に足が前に出るということもありますし、気持ちの部分も同じです。話すことが苦手、人の目を見られないという人の場合、それを克服しようと思っても何から始めたらいいかわからないというケースが多いでしょう。

話し方や伝え方って、普段誰から習うことはないと思うので、みなさん何が正解で何が間違っているかがわからないと思うんです。そこをサポートするための、ちょっとしたきっかけを与えるだけで、みなさんすぐに変わります。90分の講座で伝え方や話し方が変わるわけないじゃないかと思われるかもしれません。でも僕は絶対に変えて見せようと思っています。

ちょっとしたきっかけが掴めると人との距離を縮めることができます。講座を受けて自信が付くことで、気持ちが前に出るから身体も前に出ます。かっこよくいうと、「人生の新しい一歩を踏み出すことができます」という感じですね。ちょっと気恥ずかしいですけどね(笑)

人前に立つことやコミュニケーションが苦手な方だとしても、この講座を受講したいと思っている時点で少し伝えることに対して前向きに思ってくださっている。その人にはきっと変わりたいと思う何かがあるはずなので、その気持ちを大切にしながら、きっかけを与えられるように注力します。もし講座に対して意欲的ではない場合でも、もし変わりたいという気持ちが少しでもあるならば、「とにかくやってみましょう!」と背中を押したいなと思っています。

伝え方もメンタルとテクニック、「伝わるため」のトレーニング

—— 講座ではどのようなことを学べるのでしょうか?

どの講座もベーシックとなる部分がありますが、序盤にまずは大きな声を出します。最初は自己紹介をするんですが、そのあとにとにかく声を出して、口を動かしてみます。基本的にしゃべることは運動することと同じです。だから動いてみないことには何も始まりません。声を出してみると意外といい声だなと思ったり、意外としゃべれるんだなと気がついたり、ご本人の中で発見があります。声を出していくことに慣れてくると次にこういうことがしたいという気持ちや意欲が芽生えてきます。その上で、次にしゃべり方やメンタル面、話すための文章の作り方などといったテクニックの部分に移っていきます。

次の段階では、対話をする対象者を想定し「伝わるために」を意識したトレーニングへと移ります。「相手に伝わるためにはこうしないといけないんだ!」と気付くためのきっかけのスイッチをたくさん用意することで、そこに自発的に気が付いたときに自信に繋がる仕組みです。講座受講前と受講後の様子を動画に撮って、見比べるとその違いは歴然です。講座が始まる前に動画を撮ることで、現在の自分の立ち位置を知ってもらうことができます。ビフォーアフターの映像を見ると、「90分という短い時間でこんなにも変わるのか!」と、みなさんご自身の成長に感動されていますね。こうしたちょっとした取り組みでメンタル面はかなり向上します。

さらに今期の講座では、プレゼンやスピーチをする人に向けた特化したコンテンツを増やしました。僕のメインの仕事である実況にも注力しています。最近はスポーツでも様々なリーグが誕生していますし、e-sportsの試合も増えているので、そこでのニーズも増えているようです。すでに民放のアナウンサーやスポーツ実況をやりたい方々からのオファーをいただいています。まだ見えていないニーズもあるので、これからも講座をしながら時代のニーズに挑戦していきたいですね。 

—— これまでにどのような生徒さんが受講されたのでしょうか?生徒さんとの印象的なエピソードを教えてください。

ありがたいことに講座スタート時から、footmediaのHPやSNSを見て、たくさんの方が受講したいとの声を寄せてくださいました。その中で最初に受講してくれたのが、明治大学の就活生の生徒さんでした。彼はサッカーが好きでチェルシーファンだったんですけど、それがきっかけでフットメディアを知ってくれていて。彼が受講した頃は、まだ講座が3つしかなくて、その中の2つ「伝え方講座」と「就活講座」を受けてくれたので、とても印象に残っています。

2020年12月から講座がスタートしたので、ちょうど時期的にもコロナ禍でのオンライン面接などがはじまり出した頃と重なりました。私に取っても手探りでしたが、彼は教えることひとつひとつをとても真摯に受け止めてくれていました。声の出し方や物の伝え方、面接や自己PRでもこういう風に話したらいいよと具体的にレクチャーするととても喜んで、うんうん頷きながらメモを取ってくれていたのは嬉しかったですね。

講座にオンライン面接を想定した内容も盛り込みつつ、オンラインを使って実践ができたのもよかったなと思っています。受講後に就活がうまくいって、めでたく希望の業界に進むことができました。彼とは今でも連絡を取り合っています。彼との出会いで、前に進みたいと思っている人のサポートをすることの喜びを改めて感じました。

「まったく伝わりません」と書かれた手紙

—— 河村さんご自身はどのようなきっかけで、伝え方の重要性に気づいたのでしょうか?

実は僕、アナウンサーになろうと一切思っていなくて、本当はパイロットになりたかったんです。パイロットになる夢を諦めたときに、突然アナウンサーになろうと思ったので、いわゆるアナウンサースクールなどには通っていませんでした。入社してから、本当に必要なことだけを自分自身で学んで吸収してきましたが、やっぱり大変でしたね。

最初に配属されたNHK青森放送局では、読み間違えのないように気をつけながら日々ニュースを読んでいました。東北の方はみなさんNHKの番組を見てくださっていて、お手紙をくださるんですね。あるとき、おばあちゃんから達筆のハガキが届きました。そのハガキが僕にとって大きな転機になります。

ハガキには「河村さんはニュースを間違えることなくしっかり読んでいるけど、まったく伝わりません」と書かれていました。間違えたら怒られるので、僕は間違えないことだけに注力してニュースを読んでいましたが、それでは何も伝わっていなかったんです。せっかくニュースを読んでいるのに、伝えたいことが伝わっていないのであれば、僕がしていることは意味がありません。おばあちゃんからの指摘はとても的確で、頭を強く殴られたような衝撃がありました。

そこからは、どうしたらニュースを観ている視聴者に伝わる読み方になるのかを必死に考えました。僕はスクールに通っていなかったからなおさら、1から考えて自分の中でこういう感じだなという感覚を掴んでいきました。読むのではなくて、伝えることについて僕が強い想いを持っているのは、その経験があったからですね。おばあちゃんからいただいたハガキのおかげで、まだこうしてアナウンサーとして仕事ができていると思います。

—— 読むと伝えるは違うということは何がちがうのでしょうか?

普段のしゃべりと放送でのしゃべりに差を作らないことですね。ただニュースを読むのではなくて、普段しゃべるように読むことが大切なんだと思いました。例えば、プレゼンなどで人前でしゃべろうとするとき、よそ行きの声を出したりして普段のしゃべり方とモードを変えてしまう人が多いのではないかと思うんですが、そうすると伝わりません。いかに普段のしゃべり方に近い状態で、人前でしゃべれるかが大事なんです。

安住紳一郎さんのしゃべり方をイメージしてみると理解しやすいかもしれませんね。力を抜いてニュースを読んでいるような印象を受けますが、普段と変わらないしゃべり方で話しているのがよくわかると思います。報道でもバラエティでもスポーツでも基本は同じです。NHKに在籍していたときは、多少NHKらしさを意識していましたが、フリーになってからはより普段通りでしゃべることを意識しています。自分のマインドをどこにセットするかで、話し方に変化が生まれてきます。

しかし一方で、普段のしゃべり方でいいと言っても、そのままでいいわけではありません。口の動かし方や声の出し方などをトレーニングして、普段のしゃべり方のレベル自体を上げることが大切です。ベースラインを上げることで、他の人との差がついてきます。あとは笑顔でいることを伝えていますね。ムスッと仕事している人よりも、笑顔の人に人は寄ってきますから。そこで付き合う人たちも変わるでしょうし、自信がついて中身が変わっていくことでそこから先の人生も大きく変わっていくと思います。

伝える技術も時代に合わせたアップデートを、魂や志を込める伝え方

—— 伝える技術にも、時代に合わせたアップデートは必要なのでしょうか?

アナウンサーとしては、自分が今何を求められているかに敏感でいないと、あっという間においていかれてしまうと思っています。時代と環境のアップデートは必ず必要ですし、日々勉強だと思っています。自分でアップデートしているつもりでもなかなかできないこともありますし、まだまだだなと痛感することもありますね。

実況に関しては、テレビよりもネットでスポーツを視聴する人が増えました。中継を見る人たちのスタイルに多様性が生まれたのは大きな変化です。私自身もインターネットで視聴できるゴルフやサッカーの番組を担当させていただく機会も増えています。

僕はこれまでNHKの地上波で、おじいちゃんおばあちゃんが観てるかもしれないことを想定して、知識のない人たちにも伝えることを長年してきたんですが、そこを考えなくていいわけです。そのスポーツを好きな人たちが、試合を視聴するために課金してみているわけですから、よりコアな解説をしていこうという気持ちに変わります。

それは実況者ももっと勉強をしないといけないということとイコールなんですが、伝える側としての求められるニーズは高まっています。番組試聴のインターネット化が進んでいくことで、視聴者のレベルもどんどん上がっていくでしょう 。こちらのレベルやスキルも上げていかないと、スパッと切られてしまうので、危機感を持ってアップデートしていかないといけないなと思います。

—— アナウンサーではない方にとっても伝え方のアップデートは必要だと思いますか?

普段の生活においても、このコロナ禍で大きく環境が変わったので、そこに対してのアップデートは必要だと思います。ビジネスシーンでは、会社や業種によっては出勤しないでもよくなっていますよね。オンラインツールを使ってミーティングをすることが当たり前になってくると、今まで以上に会話の瞬発力が求められるように感じます。

オンラインでのミーティングになったことで、今まで以上に瞬時の会話力や伝える技術が必要なんだと思っています。会議室に集まって会議をするときにうたた寝をしていたようなおじさんはもう立ち行かなくなってしまう時代になっているんです。ちゃんと伝えたいことを共有できないといけないですし、様々なツールを使いこなせないといけないですよね。そこに対して、サポートや手助けができると思っています。

—— 講座の受講を検討中の方へメッセージをお願いします! 

講座を一言で表すと「魂」だと思っています。技術面やテクニックも大切ですが、一番大切なのは魂なんです。昭和の男感がすごく出てしまいますよね(笑) しゃべることって、普段誰でもやっていることなので、みんな真剣に向き合わないんですが、そうじゃないんです。何を言いたいのか、何を伝えたいのか、どう伝えたいのかを突き詰めて行った時に、魂の部分がないと相手には何も伝わりません。これでは、プレゼンも面接もいい結果にはならないですよね。魂も志もなければ、AIに取って変わられてしまいますから。

テクノロジーは日々進化をしていますし、ニュースだってもうすでにAIが読んでいます。情報量はAIには敵わないから、もう実況なんていらないんですよ。ではAIにはできないことは何かというと、試合に向けての熱量や試合までのプロセスや選手の想いや魂を僕たちが代わりに伝えることだと思っています。そこは人間じゃないとできないし、譲れないところです。暑苦しいですよね(笑) 人によっては暑苦しいと思われるかもしれないですが、これが現役のアナウンサーが伝えられることだと思っています。

講座を受講することによって、自分が何者なのかわかります。自分が進むべきベクトルが見えてきます。受講者おひとりお一人の特性をしっかりと理解し、スキルや能力が開花するようにサポートいたしますので、ぜひお気軽にご連絡ください。

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